完成記念講演会を開催しました
11月14日(土)、完成した屏風を公開展示している京都文化博物館にて、プロジェクト賛同人代表・小林忠先生の記念講演会を開催しました!
小林忠生は、言わずと知れた日本近世絵画史の第一人者でおられます。 語り口は軽妙、時々笑い声の起こる楽しい講演会でした。
特に印象に残ったのは、江戸時代に「風神雷神図」を所有していた一橋家と酒井抱一の関係性のお話です。裏面へ画を描かせた一橋治済(ひとつばしはるさだ、1751-1827)は11代将軍・徳川家斉の父として当時権勢を誇ったそう。位は従一位で、将軍本人よりも高い位を戴いていたそうです。
姫路藩主酒井家の次男坊・酒井抱一は、それはそれで大変な身分の貴人ですが、それでも一橋治済との身分の差は大きく、抱一が描いた「風神雷神図」(現在は出光美術館所蔵)は、光琳筆のそれが宗達筆のオリジナルとほぼ輪郭を同じにするのに対し、臨写するしかなかったのか随分バランスが異なっているとのこと。
抱一にとっては、私淑する光琳作品の裏面に、当時一の権力者である一橋治済から依頼を受けて画を描くのは、大変な名誉だった事でしょう。画には自らの嗜好である俳諧の要素も加え、自分らしさも表現した作品は見事!のひとことです。
現代においても煌めく星のようなこの両面屏風は、江戸期の最も豪華絢爛たる環境で作り出されたことがよく解る講演会でした。小林先生ありがとうございました。