元は表裏であったふたつの屏風を
本来の姿に復元複製
京都に里帰りさせるプロジェクトです
俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳。みんな京都に生まれ育っています。現代に受け継がれた数多くの琳派作品のほとんどは、この京都で描かれたものと言っても過言ではないでしょう。
光琳の代表作「重要文化財 風神雷神図屏風」(東京国立博物館蔵)も京都で描かれました。この「風神雷神図」と酒井抱一筆「夏秋草図屏風」(重文 東京国立博物館)は、現在では別々の作品に仕立て分けられていますが、元はひとつの屏風の表と裏でした。
本プロジェクトは、広く市民の皆様より基金を募り、すでに複製が完成している「夏秋草図」と、新たに制作する「風神雷神図」によって、両面に描かれていた元の姿を再現し、京都に里帰りさせようという複製ならではの試みです。この取り組みは、琳派400年記念祭委員会のプラットフォーム事業に認定されています。
文化の普及・教育、そして精巧な写しを制作して後世に遺していくことの大切さを
一人でも多くの方にご理解ご賛同いただくために
プロジェクトの支援という形でご参加をお願いしています。
なぜ複製が必要なの?
文化財を公開し鑑賞の機会を増やすことと保存することとは矛盾することですが、それを解決するひとつの手段が精巧な複製を制作することです。
文化財に実際に接することで日本の歴史や文化への理解が深まります。しかし貴重な文化財を気軽に公開することはできません。ですが精巧な複製ならばそれが可能です。また精巧な複製という「写本」を作ることによって、万が一原本になんらかの被災があっても、原本に準ずるものが後世に残されることになります。日本の文化財はこうした写本によって伝承されてきた歴史があります。
※写真はコロタイプ版法隆寺金堂壁画展(女子美術大学美術館)
複製をどう活用するの?
完成した屏風は京都府に寄贈されます。寄贈後は府の公共施設等で展示公開され、さまざまな活動にご利用いただきます。
2015秋には京都府の公共施設でお披露目されます。その後、子供向けワークショップや府内教育施設への貸し出しなどにご活用いただきます。また、海外との文化交流に展開していくことも検討しています。
京の職人技・コロタイプとは
100年以上前から京都の地に受け継がれた伝統印刷技法「コロタイプ」は、世界でも稀少になった職人の手わざによる大変手間暇がかかる技術です。
原本同様の文化財体験をしていただくためには、また写本として後世に遺す複製を制作するためには、それにふさわしい技術が大切です。今回の復元に用いる複製技法は「コロタイプ」という100年以上前から京都の地に受け継がれた伝統的な職人技です。丹精込めて作り上げられる複製は、コロタイプでしかなしえない存在感を表します。特製の顔料インキや手漉き和紙を使うことで高められた耐久性は、1世紀にわたる実績で証明されています。
※映像はFritz Schumann氏による工房取材作品
別のサイトが開きます
プロジェクトの概要
平成27年は、本阿弥光悦が徳川家康より京都鷹峯の地を拝領した元和元年(1615)から400年にあたっており、京都では琳派四百年記念祭委員会を中心として、様々な事業が進められています。その趣旨に賛同し、「風神雷神図」「夏秋草図」復元屏風の制作プロジェクトを立ち上げました。
広く市民の皆様より基金を募り、すでに複製が完成している「夏秋草図」と、新たに制作する「風神雷神図」によって、両面に描かれていた元の姿を再現し、京都に里帰りさせようという複製ならではの試みです。完成した屏風複製は京都府に寄贈し、寄贈後は府の公共施設で展示公開され、さまざまなかたちで活用していただく予定です。本プロジェクトは、有識者の先生方のご賛同をいただき、《尾形光琳筆「風神雷神図屏風」復元複製里帰り実行委員会》が運営いたします。また所蔵である東京国立博物館のご協力と、各方面からのご協賛・ご後援をいただき推進してまいります。
運営
尾形光琳筆「風神雷神図屏風」復元複製里帰り実行委員会/代表理事 鈴木 巧
実行委員(五十音順)/
荒木かおり(有限会社 川面美術研究所)
大入達男(株式会社 大入)
(事務局:株式会社便利堂内)
協力/東京国立博物館
後援/コロタイプ技術の保存と印刷文化を考える会
プロジェクト運営
賛同人代表
小林 忠 学習院大学名誉教授
岡田美術館館長
賛同人(五十音順)
有賀 祥隆 東北大学名誉教授
板倉 聖哲 東京大学大学院教授
榊原 吉郎 京都市立芸術大学名誉教授
佐藤 道信 東京藝術大学教授
佐藤 康宏 東京大学大学院教授
佐野 みどり 学習院大学教授
島尾 新 学習院大学教授
清水 眞澄 三井記念美術館館長
下出 祐太郎 蒔絵師・京都産業大学教授
関口 正之 遠山記念館館長
並木 誠士 京都工芸繊維大学大学院教授
細見 良行 細見美術館館長
森 清範 清水寺貫主
森田 りえ子 日本画家
吉澤 健吉 京都産業大学教授
冷泉 為人 冷泉家時雨亭文庫理事長
プロジェクト賛同人
公開スケジュール
プロジェクト完成記念特別展示
場所 : 京都文化博物館2階コネクションホール
期間 : 平成27年11月3日(火・祝)
~12月6日(日) 10:00 ~ 19:30
講演会 : 11月14日(土)10:30~
賛同人代表の小林忠氏(学習院大学名誉教授・岡田美術館館長)の記念講演会(3階フィルムシアターにて。要別途申込制)
別のサイトが開きます
共演ふたつの風神雷神図屏風
琳派の系譜「風神雷神」と「夏秋草図」
―宗達が描き光琳が写し抱一が受継ぐ―
日時 : 平成28年1月16日(土)
~1月31日(日) 10:00~16:00
場所 : 大本山建仁寺 本坊大書院
※拝観料が必要です(一般500円・中高生300円)
講演会 : 1月24日(日)
榊原吉郎氏(京都市立芸術大学名誉教授)の記念講演会(定員50名様。聴講料無料。要別途申込制)
プロジェクト完成記念特別展示
日時 : 平成28年2月23日(火)
~3月10日(木) 9:00~17:00
場所 : 東京美術倶楽部(東京港区)
賛同人代表のことば:復元複製プロジェクトに寄せて
琳派の巨匠、尾形光琳が描いた「風神雷神図屏風」は、光琳が俵屋宗達の代表作を模写したもので、光琳独特の力強い描線と明快な色使いが遺憾なく発揮された、模写にとどまらない創造的な作品となっています。宗達が遺した記念的な傑作にあえて挑戦した光琳には、京都の先輩画家宗達に対して強い憧れと尊崇の念とがあったに相違ありません。
そして、それから約100年後、江戸の画家酒井抱一は、光琳画の真裏に「夏秋草図」を描きました。二曲一双屏風の裏面に、表の天空に対して地上の自然、金地に対峙する神々の激しい動きに対して銀地に配された夏秋草のしなやかな繊細さ、そうした粋な対照を瀟洒に表現した抱一の最高傑作であり、江戸琳派芸術の頂点をなす作品を結実させました。抱一が光琳の風神雷神図の真裏に渾身の絵筆をとったということは、宗達以来の琳派の系譜をしっかりと受け継ぎ、自らの手で次なる段階へ展開させようとする、明確な自覚が確立していたように思われます。
原本保存の為に、現在は別々の一双屏風に改装されているオリジナル作品が、再びもとの姿に戻されることはないでしょう。この二つの屏風が、現代の精巧な複製技術によって、描かれた当時の姿、表裏一体の屏風に復元される。それは、単なる形態の再現に留まらず、光琳が宗達に、抱一が光琳に対して抱いた、それぞれの熱い憧憬の念をも甦らせることになるでしょう。
私が東京国立博物館の若き学芸員であった頃、表裏が分かれる前の屏風を苦労して展示した思い出もあり、当プロジェクトに対しては特別な感慨を抱いています。光琳の「風神雷神図屏風」は京都で描かれました。国の重要文化財に指定されている原本が東京に保存されている今、この復元された屏風画が琳派400年の記念の年に京都に里帰りする。文化財を複製することの素晴らしい意義が、まさに証明される快挙と言えましょう。このプロジェクトを契機に、「複製づくり」の大切さが改めて評価され、さらには一人でも多くの方々が日本美術の魅力を再認識していただけるであろうことを、心から願ってやみません。
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プロジェクト賛同人代表 小林 忠
(学習院大学名誉教授・岡田美術館館長)
≪プロフィール≫
東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(美術史)
学習院大学名誉教授、岡田美術館館長、前千葉市美術館館長
国際浮世絵学会会長、日本美術専門誌「国華」主幹
専門は、浮世絵を中心とした江戸期の日本美術
≪主な著書≫
『画家とふるさと』東信堂、『江戸の浮世絵』藝華書院、『江戸の絵画』藝華書院
ほか著作多数
貴重な文化財を後世に遺していくために、本プロジェクトをご支援ください!
お問い合わせ
日本の文化を代表するといっても過言ではないこの二作品の復元複製里帰りにあたり、皆様のご支援を募っております。「文化財を護り未来へ伝える」願いを、このプロジェクトに込めています。少々専門的で難しささえ感じる“文化財”ですが、この二作品のプロジェクトは、複製の完成後も皆様を楽しませることでしょう。文化財を楽しみ、文化財にふれあい、そして伝えて欲しい。楽しくご支援いただけるプログラムをご用意いたしました。
尾形光琳筆「風神雷神図屏風」復元複製里帰り実行委員会事務局
京都市中京区新町竹屋町下ル弁財天町302 ㈱便利堂内
TEL: 075-231-4351(便利堂代表)