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風神雷神図と夏秋草図 -ふたつの屏風の物語-
光琳と抱一が活躍した時代には100年の隔たりがあります。光琳に私淑した抱一が、光琳の代表作「風神雷神図」の裏面にオマージュを込めて表現した渾身の作が「夏秋草図」です。まさに時を越えたコラボレーションといえるでしょう。
酒井抱一(1761-1828)は、文政4年(1821)頃に11代将軍家斉の実父、一橋治済のために尾形光琳(1658-1716)筆「風神雷神図屏風」の裏面に「夏秋草図屏風」を描きました。雷神の裏面には夕立に打たれ頭をもたげる夏草と潦(にわたずみ)を、風神の裏面には野分の風になびく秋草が描かれ、表面の金地に対して裏面は銀地で対比しています。裏面に夏秋草図が描かれたことで四季絵となっており、俳諧にも通じたまことに江戸の粋人・抱一らしい新たな趣向が加えられています。
しかしそれだけにとどまることなく、その表現は表面の光琳を強く意識しつつ、抱一の美意識が十全に投影されています。構図も、裏面であるため真ん中が山折りになりことから、左右が奥まる遠近感を考慮して右隻の流水と左隻の蔦を描いています。
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